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琉球漆器/王府が自ら宝物として育てた工芸品が琉球漆器であり日本美術史・東洋漆工芸史に秘められていた輝かしい一角/沖縄県の伝統工芸品 |
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昭和53年 130ページ
かつての琉球王国の漆器、今日の奄美諸島と沖縄県における中世・近世の漆工藝は、一 般には全くといってよいほど知られていない。たしかに明治末年以来、今日までに出版された 沖縄の歴史や美術工藝関係の書物で、漆器について一行も触れていないものはないし、その著 者はもとより、沖縄美術工藝の専門といわれる人々や好事家の間では、漠然とした定説~や 常識が形成され、一般にも広められては来た。
だが、その淵源を糾してみると、編纂古記 録の僅か数行を援用しつつ、当時の伝称を録して明治中頃に公刊された一書『琉球漆器考』に 発したものと判明し、しかもその記録や伝称は、多く誤って解釈されて来たと見られる。 その結果、今日までに流布している沖縄の塗りもの、に関する常識は、十八世紀後半以降、大量生産の時代になってからの、簡便な技法による類型化した文様を以て形成され、多くは民 襲品と捉えられて、エキゾティックな意匠ばかりが、徒らに印象づけられるに至っている。
しかし、近年の新たな研究によって、琉球漆工藝は中山王府のもとに、十五世紀には既に高 度の技術を習得し、十六世紀から十七世紀初頭には、時に中国・日本本土よりも優れた作品を 生むに至っていたこと、さらに島津氏の支配下に置かれた近世でも、本格的な“唐物風"螺鈿 漆器や、伝統的沈金・斬新な堆錦を以て、優れた作品を生み続け、江戸の将軍や御三家に贈っていたことが判明した。まさに王府が自ら“宝物』として育てた工藝品が、琉球漆器" であ り、日本美術史・東洋漆工藝史に秘められていた輝かしい一角であったと、この展覧会を通じ て新たに認識・評価されるものと思う。
昭和五十三年四月
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