『石に描くー石版画の200年ーゼネフェルダーからピカソまで』展図録　1998年刊行　展覧会図録

1998/4/18～6/14に町田市立国際版画美術館で開催された『石に描くー石版画の200年ーゼネフェルダーからピカソまで』展の図録です。

石版による印刷術が考案されて、今年でほぼ200年が経過しました。ドイツ人アロイス・ゼネフェルダーは自作の戯曲等の印刷のためにこの印刷術を考案しました。しかし、のちの展開を顧みると、文字の印刷よりも、画像の印刷の面 での貢献が大きいことがわかります。 石版は、木版や銅板と異なり版面を彫ったり削ったりしません。平らな石の面に、あたかもデッサンするのと同じ調 子で描きさえすれば版画が生まれます。まるで魔法のような印刷術です。画家が早くからこの技法に注目したのも当然 といえましょう。考案された200年前から今日に至るまで、各時代の巨匠たちが石版画の名作を残してきました。ゴヤ、ジェリコー、ドラクロワといったロマン主義の画家、19世紀後半から高まる「画家の石版画」の流れで中心的な役 割を果たしたマネやルドンなど、さらに色彩豊かな石版画やポスター芸術が開花した世紀末、20世紀美術を代表するマティスとピカソ、そして第二次世界大戦後のアメリカの作家たちまで、多くの画家がこの技法の表現に魅了され、版画 の分野に輝かしい石版画の歴史を築いてきました。 石版印刷術の考案200年を記念して開催する本展覧会では、石版の興隆がどのような時代背景を伴っていたかがわか るように、8つの時代に区分しました。そして、各時代を代表する作品を展示し、今日までの石版画の流れを振り返ってみたいと思います。